木村タカヒロ日記 バックナンバー
日時 | タイトル | 配信数 |
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2018/05/22(火) 10:00 | 【木村タカヒロ日記】Vol. 81 代打・木村39才(2004/8/30) | 84 |
2018年5月22日
おはようございます。木村タカヒロです。
今日は湘南で快画塾なので、
出かける前に日記を書こうと
6時に起床して
3時間(←やや誇張)キーボードを
叩いたのですが、
まとまらなかったので、
過去日記、ヘルプミー!
無作為に選んでいるので、
時系列は滅茶苦茶だし、
再掲の可能性もありますが、
気にしない、気にしない(笑)
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2004年
8/30
次女(5歳)は意地っ張りだ。
単に我が強いということではなく、
僕が見るに、
欲望をあらわにすることを
極端に嫌がっているようだ。
たとえば、既に自分の分は
食べてしまった好物を、
「あげようか」と差し出すと、
必ず「いらない」という。
長女(10歳)は違う。
素直に喜んで食べる。
幼少時からそうだった。
子供らしくてかわいいと思う。
「がめつい自分を悟られたくない」
とう次女の気持ちを察し、
「もう腹一杯で食えないから、
頼む、手伝ってくれないか」と
困惑顔で懇願してみたりするが通用しない。
かたくなに拒む。
そして「じゃ、あたしがもーらい」と
長女がゲット。いつもそう。
きょう、家族でデパ地下に行ったら
フルーツを素材にした
ソフトクリーム屋がオープンしていた。
「うわあ、美味しそう、食べたーい」と長女。
「じゃ、私はよそで買い物してるから、
その間に食べててね」と離れる妻。
「よし、食べよう」と号令をかける僕に
次女は言う。「いらない」。
「あ、でたでた意地っ張り。
あたし、ストロベリー」。
妹を突き放す姉。
さあ困った。
いらないわけないんだ。
食べたいに決まってるんだ。
まずはお決まりのパターンで攻める。
「じゃ、お姉ちゃんの一口もらうか」。
「いい」。
「あ、じゃ、パパが食べるから、
ちょっと手伝ってくんない?
パパはやっぱバナナかな」。
「やだ」。
「むほう、うんめえ」と姉。
「ひとくちくれ」と食べてみると、
ほんとにうまいので、
「いやあ、うまいよこれ、ちょっと食べてみな」と
感嘆しつつ、そのまま一連の動作、
あくまで自然の流れで
次女の口元に差し出してみたが、
ぎゅっと結んだ口は開かなかった。
目は欲しいと言っているのに。
ま、しょうがない、いつものことだと諦めた僕に、
だっこをねだってきた。
僕は哀れみを抱きつつ次女を抱きかかえた。
すると、耳元で「ねえ」と次女の小さな声がした。
「え?」と聞き返すと、
「なんでもない」と言う。
つぎに、メニューを指差し、
これ、読んでと言う。
「パイン、ブルーベリー、ラズベリー、
バナナ、メロン・・・」。
続けて「どう?食べたくなった?」
などと聞いてしまうと、完全アウトなので、
メニューを読むだけにしておいた。
そしてもう一度、「読んで」と頼まれて、
同じように繰返した。
「食べたい」と言えるきっかけをつくろうと必死だ。
そして、また耳元で「ねえ」と発しようとして
唾を飲み込んだ次女の小さな「ね」の声を聞いた途端、
僕の涙腺がゆるんだ。
いつか、自分にもあった、こういうこと。
自分の欲望に素直になれなかったことへの後悔。
抑えたはずの欲望との葛藤。
たったひとことが言えないもどかしさ、つらさ。
次女の心臓の鼓動が伝わってくる。痛い。
僕はだっこしている腕をぎゅっと強め、
「がんばって。勇気を出して」と
何度も何度も心のなかでつぶやいた。
妻が買い物を済ませ、こっちへやってくる。
僕は「ママがかえってきた」と言いながら、
「時間がない。さあ、がんばれ」と
もう一度心のなかで叫んだ。
すると、やはり小さな声で「ねえ」と発したので、
「ん?」と聞くと、
「アイス、食べても、いい?」と
途切れ途切れに言った。
僕は娘の尻の位置にある拳で
小さくガッツポーズをつくりながら
「ああ、いいよ、何味にする?」
と平静を装いつつ聞き返した。
次女は「バナナ」と恥ずかしそうに答えた。
そしてバナナ味のソフトクリームを手にした途端、
いつものはじけた笑顔が戻った。
最近、どうもいちいち涙腺がゆるむのは、
オリンピックで感動のハードルが
低くなってしまっているせいなのか。
金メダルでガッツポーズならいいけど、
ソフトクリーム食ってガッツポーズじゃなあ。
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